OREC(オーレック)

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Developer's VoiceRC MOWER 開発者の声

技術の力で草刈りの負担を軽減し、農家さんの安全を守りたい

OREC開発部三宅真吾

リモコン型農機としての性能を追求した製品開発プロセス

私はORECの第3開発部のメンバーとして、おもに製品開発におけるエンジンやミッション、作業機などのレイアウトを考える、メカの構成を担当しています。2010年に新卒で入社して以来、小型乗用草刈機や歩行型の草刈機、そしてラジコンモアーシリーズ(RC MOWER、以下RCシリーズ)に至るまで、さまざまな機種の開発を担当してきました。

RCシリーズの開発は、人手不足の課題を抱えている農家の方々に対して、草刈りの省人化や省力化に貢献できる製品をつくりたいという課題意識からスタートしました。シリーズ最初の製品として2022年に発売した「RCSP530」は、主に田んぼの畦や、中山間地域の草刈りで使用されることを想定しており、大きい農機が入れない幅の狭い圃場や、なかなか人が立ち入れない場所の草刈りを可能にする、OREC初のラジコン草刈機として開発した製品です。

その後、第2弾として2024年に発売した「RCHR800」は、シリーズの中で最もパワフルな製品で、ORECの他のハンマーナイフシリーズと比べても、高馬力のエンジンを搭載しています。さらに2026年に新しくラインアップに加わった「RCSP700」は、同じく高馬力のエンジンを乗せたパワフルな製品で、車重もあるため背の丈以上の草も押し倒して行ける高い走破性と高い斜面性能により、幅広い用途に使うことができます。

ラジコン型製品の開発はORECにとってはじめての挑戦でしたが、以前から社内の電動制御グループが積み重ねてきた基礎研究の成果を、具体的な製品開発に活かすことができる機会でもありました。とはいえ、他の製品よりも求められる性能は高く、実際に開発を進める中で思い通りにいかないことやトラブルもありました。机上での設計と実際に機械を組立てて動かすのとでは大きな違いがありますし、製品の“脳みそ”と言える基板部分の熱対策には特に気を配る必要がありました。近年は酷暑の中でも草刈りをしなくてはならないので、真夏でも不具合なく使用できる製品にするために、炎天下で想定される作業を試作機で行い、どのくらいの熱が発生し、どんな状況になると不具合が生じるのか、何度も検証を重ねていきました。夏のシーズンを逃すと次に検証できるのが翌年になってしまうため、他の製品開発プロセス以上の大変さがあったと思います。

他にも、多くの電装品も積んでいるため、防水性の確保や、機体の耐久性や性能の確保にも苦労しました。試験を重ねる中で、クローラーが外れたり、足の軸が変形したりしてしまうこともありました。その度に改めて強度解析にかけ、効率的な補強箇所を探りながら、更なる改良を加えていきました。

なかでも最も大変だったのは傾斜性能の確保でした。斜面で使用した時にしっかりと地面に食いつき、ラジコン型の特徴を活かして、人が歩けないような斜面でも使用できる機械に仕上げたかったので、重量バランスを調整しながら、適切なクローラーの幅やトレッドを検討しました。クローラーのラグにおいては、RCシリーズオリジナルのパターンを開発し、横滑りに強い走破性を実現しました。

安心・安全な食に貢献するORECのものづくり

ORECの製品開発の醍醐味は、自分たちの手で1からつくりあげていく工程そのものにあると思います。まずはCADで設計図を描き、ある程度まとまった段階で試作機を組みます。開発作業場には、さまざまな種類の工作機械があるため、設計者自身が鉄板を切ったり、溶接したりしながら、短期間で試作機を組み上げていきます。組み上がった試作機を実際に動かし、そこで見つかった課題を解決するために、一つひとつ工夫を加えながら検証を重ねていきます。さらに、試作機を試していただける農家さんが近隣にいらっしゃるので、そこでいただいたアドバイスも製品開発には重要な助けになっています。

OREC製品のすべてのデザインは、2018年よりデザインディレクターを務めている、プロダクトデザイナーのやまざきたかゆきさんに監修いただいています。やまざきさんとは普段から頻繁にやり取りをしているのですが、製品の各部品におけるエッジの形状や、全体のフォルムのまとめ方など、私たちにはない目線からの意見をビシッと伝えてくださり、毎回納得してしまうことばかりですね。長年のデザイン監修により、ORECデザインのスタイルが開発部の中に浸透してきているので、やまざきさんに試作機を見てもらう前の段階から、ある程度統一感のある設計ができるようになってきました。

設計者としてもっとも達成感があるのは、実際に社内の製造ラインで自分が設計した機械が組み上がっていく様子を見る瞬間ですね。これまで設計検証を重ねてきたものがようやく完成形となって現れるので、自分たちがやってきたことへの現実感が一気に湧いてくるんです。

RCシリーズの製品が完成した瞬間は、嬉しさの反面、ドキドキ感も大きかったですね。試作機の段階でお客様からいい反応をいただいていたものの、実際に世に送り出してみないとわからない部分も多く、購入された方からどんな反応があるんだろうと不安もありました。結果的にはポジティブな評価が多く、なかには1台買った後にもう1台買い足してくださる方もいらっしゃいました。特に、開発時に最もこだわった傾斜性能に対しての評価をいただいた時には、設計者としての嬉しさがありましたね。

RCシリーズは耕作放棄地の草刈りにも重宝されており、これまで人が立ち入ることの難しかった場所でも活用いただいています。公園や河川敷などの広い土地、さらに高速道路などを管理されている行政関連のお客様も増えており、農業に留まらない領域の方々の仕事をサポートできているのではないかと思います。

RCシリーズが目指すのは、ラジコン操作の実現によって草刈りの負担を軽減し、他の仕事に手が回せるようになることで、農業全体の生産性の向上に寄与することでもあります。さらに、これまで除草剤を撒かざるを得なかった中山間地域の果樹農家さんの草刈りを可能にすることで、より安心・安全な食づくりにも貢献できればと考えています。

農業に留まらない、新たな分野の製品開発への挑戦

ORECでは、“世の中に役立つものを誰よりも先に創る”というものづくりの精神が根付いているため、新商品をつくりたいと思っている社内の開発者は多いと思います。特に私が所属する第3開発部は、機械設計やプロジェクトの進捗管理のほかに、スマート農業や電動化によるカーボンニュートラルの推進など、新たな製品開発につながるタネを探す活動もしているので、そういった気持ちで働いている部員は少なくない気がしますね。

私自身、入社したてのころはまだ経験が浅く、先輩の技術を吸収することに日々精一杯でした。それから徐々に経験を積み、製品開発に関する引き出しも増えてきたので、これからは私たちの世代がRCシリーズのような新しい製品をつくっていかなければならないと思っています。

常々設計者として感じているのは、ORECが培ってきた技術は、農業に留まらないさまざまな分野の社会貢献につなげることができるのではないかということです。ORECにとってまだ未開拓の分野にアプローチしながら、潜在的なニーズにマッチする製品のアイデアを形にしていきたいと考えています。

人手不足に悩む農家の方々の省力化に貢献するため

OREC開発部小玉尚人

農作業の現場の実用性を重視した開発プロセス

私はORECの第3開発部の制御電動グループのメンバーとして、主に新製品の開発を担当しています。今年でORECに入社してから12年目を迎え、ラジコンモアーシリーズ(RC MOWER 、以下RCシリーズ)においては、第1弾として2022年に発表した初代モデルの「RCSP530」から最新のラインアップに至るまで、一貫して開発に携わってきました。

RCシリーズは、狭小地で扱いやすい小型モデルの「RCSP540」をはじめ、作業効率と馬力のバランスが取れた「RCHR800A」、より一層の高効率を追求した「RCSP700」の3つの製品ラインアップがあります。基本的な構造やプログラムの設計思想はどれも同じですが、それぞれ仕様が異なり、中に搭載する部品の大きさや流す電気の量も変わるので、開発に際しては細かな調整を繰り返す必要がありました。

RCシリーズの開発は、ORECにとって大規模な遠隔制御を導入した初のプロジェクトであり、リモコン操作によって機体を制御するシステムの設計が最大の課題でした。私はプログラムの検討から電装品の選定、ハーネスの設計を担当しており、過酷な屋外環境でも使用できる温度や振動への耐久性の高さはもちろん、斜面で使用した際の安定性を確立するための試作を重ねました。

従来のハンドル付きの農機は、人が手に取って操作する必要がある以上、安全な平地での作業に限定されますし、法面の草刈りに対応したスパイダーモアーのシリーズでも、ハンドルの届く範囲にはどうしても限界がありました。RCシリーズの開発においては、農家さんが働く現場に頻繁に足を運び、調査した内容を試作機に反映していったので、実用性を重視した設計に取り組むことができたと思います。実際にシリーズの製品をお使いいただいている農家さんからは、不安定な傾斜などの草刈りが安全になり、作業の負担が軽減されたことへの感謝の言葉を頂いています。
メンテナンス性の高さも意識的に設計しており、お付き合いのある全国の農機具店に修理受付の窓口があることが、ORECの強みになっています。製品の不具合や故障を自社内で直すことができるので、ラジコン製品を展開している他社と比べても、しっかりとしたアフターサービスを提供できていると思います。

ラジコンに不慣れな方でも使いやすい、直感的な操作の実現

ORECの草刈機は、基本的にエンジンの動力をベルトやギアが伝達し、ナイフを回転させながら走行していく構造を採用しています。RCシリーズにおいては、リモコンから送られる信号によってモーターが動く仕組みのため、遠隔制御のための基板など、新たに搭載するべきものが増えています。私が担当するプログラムの設計においては、リモコンの操作によってモーターをどのように回転させ、加速と減速のバランスをどのように調整するのかを考える必要がありました。通信への応答性を高めすぎると急発進や急停止によって機体がバランスを崩し、転倒の原因になります。RCシリーズはそういった加減速のバランス調整が他の製品よりも重要だったため、ひたすらプログラム調整を繰り返す過程が不可欠でした。

ORECの本社には、雑草を生やした検証用の丘が敷地内にあり、RCシリーズに限らず、開発期間中は実際に草を刈りながら試作機を動かしていきます。通常の製品開発のプロセスでも数百時間以上は検証に費やしますが、とりわけRCシリーズは何度も検証を重ねる必要があり、一時期は丘の一部の草が生えなくなってしまうほどでした。
リモコンの仕様を検討する際には、通信遅延をなくすのはもちろん、ラジコンに使い慣れていない方でも簡単に操作できる、直感的な操作方法を模索していきました。農家さんの中にはラジコンを触ったことがない方もいらっしゃるので、誰にとっても使いやすい、直感的な操作方法を採用し、なるべくスイッチの数も最小限にしています。以前、製品を試されていたご高齢の農家さんが、「あ、自分にも使えそうですね」とおっしゃっていたのを聞いた時にはやっぱり嬉しかったですね。

まずは動かしてから考える、ORECならではのものづくり

つい当たり前のことだと思ってしまっていますが、とにかく手を動かして試作機を創り、検証を繰り返すことで問題点を発見していけるこの環境は、ORECならではのものづくりが生まれる大きな理由になっていると思います。ひとまず組んでみた試作機を実際に動かすと、すぐに壊れてしまったり、こちらの意図とは異なる動きをしたりと、様々な課題が見つかります。最初はうまくいかないことの方が多いですし、そこから課題を洗い出していくプロセスこそが重要で、その都度調整を繰り返していく過程は大変ではあります。

それでも、この仕事の面白さは、一つひとつの技術はありふれたものでも、それらを組み合わせることで全く新しい製品を生み出せるところにあると思います。様々な技術を草刈機に落とし込んでいく楽しさもありますし、より多くの農家さんに届けるために量産化の方法を探る醍醐味もあります。何より、技術の力によってかつて危険を伴っていた作業から農家さんを解放し、作業効率と安全性の向上に貢献できているという実感こそ、仕事のやりがいに繋がっています。

RCシリーズによってリモコン型の農機は実現しましたが、今後はより高度な技術を草刈機に落とし込むプロジェクトにも挑戦していきたいと思っています。ゆくゆくは人の手を必要としない、自動運転の農機も実現させたいですね。私が所属する第3開発部では、普段の業務の他にもそういった新製品の開発プロジェクトを並行して推進しており、自動運転の農機の検討も着々と進めています。安定した性能と耐久性のある製品を仕上げるにはまだ課題がありますが、将来的には自ら障害物を避けながら走行していく自動運転の農機が完成すれば、ほったらかしのままでも草刈りが完了する、そんな未来が実現するかもしれないですね。

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